Research & Development 研究・開発
サステナビリティ
サステナビリティ

研究・開発方針

クロージャーは飲料・食品メーカー様で充填された中味を、鮮度・風味を損なうことなく、ご家庭へお届けする、いわば「タイムカプセル」のようなものです。

日本クロージャーは創業80年来培ってきた、中味を守る「密封技術」、中味の安全性を明示する「タンパーエビデント技術」、開け易さ・使い易さを追求した「易開封技術」、これら3つの技術を柱として、すべての人が‟安心・安全”に、そして‟使いやすい”クロージャーの開発に取り組んでいます。

また以前より‟環境に優しい”環境配慮型の製品開発にも力を入れてきました。金属ならびにプラスチックの使用量削減には継続的に取り組み、調味料用キャップには分別機能を付加し、さらに近年では植物由来プラスチックを用いた製品を開発し、展開を図っています。

持続可能な未来を目指し、人と社会の幸福に貢献していくために、日本クロージャーは新たな価値創造に挑戦し続けます。

私たちの研究開発

28フックTC

Project vol.1 強炭酸ブームを支える国内最軽量キャップ 製品開発部 第一グループ 中村 真

お客様からの要望にお応えするため、我々は日々製品の改良に努めています。そのなかで今回いただいた要望は ①軽量化 ②高ガス炭酸飲料への対応 ③開栓音 の3点を同時に叶えることでした。キャップの軽量化は製造に必要な原材料の削減など、年間数千トンのCO₂削減に繋がります。
また、昨今の「強炭酸」ブームに耐える密封性と、従来キャップの開けやすさの維持。それでいて、炭酸感を感じる開栓音など求められる要素が多岐にわたりました。

▲ 28フックTC

軽量化を図りながらも、最大限に引き上げた耐圧性能

様々な課題がある中で、まず取り掛かったのはキャップの軽量化でした。
キャップ下部のバンド部分は性能への影響が少ないため、重点的に軽量化を図りました。一方で、強炭酸による内圧上昇で発生するキャップの浮き上がりに対しては、キャップ中部のネジ部を強化することで対応しました。開発の最中、開栓音が低下する問題が発生しました。設計上の問題が分からず、試行錯誤を繰り返すこと1年、ようやく原因の究明に至り、開栓終了時に一気にガスが抜けるようなシール形状を設計しました。こうして国内最軽量の炭酸飲料キャップを開発することができました。

▲ 28フックTCの半断面図

プロジェクトを振り返って

製品開発部 第一グループ
中村 真
開発当初は既存キャップのバンド部分の軽量化で済むものと思っていました。しかし、このキャップ用の金型構造確立と全ての性能を満たす形状確立が想定外に難しく時間がかかりましたが、試行錯誤を繰り返した結果、なんとか無事に製品化に繋がりました。
製品開発部 第一グループ
井上 理
開発当初から様々な課題があり、特に開栓音低下の原因は終盤まで解明に至っておりませんでした。トライ&エラーを繰り返すこと1年、ようやくメカニズムの解明に至り、製品化することができました。仕様完成まで辛抱強くお待ちいただいたお客様、開発を支えてくれた仲間達に感謝いたします。

29スクリューヒンジバルブ

Project vol.2 2色成形技術により実現した、コストダウンと機能性アップ 製品開発部 第二グループ 島田 知

近年、調味料業界では、キャップの役割としての必須事項である密封性確保に加え、注ぎやすさ、液切れの良さなどの使用感向上が求められています。そのため、注ぎ口にシリコン製バルブを採用する例が増えてきていますが、シリコン材が高価であることやシリコンバルブを固定する別パーツが必要であること、組み込む装置が別途必要になることによりキャップの単価が高くなることが課題となっています。そこで、バルブの材料をシリコンからエラストマーに変更し、2色成形技術を採用することにより、バルブとキャップの一体成形を可能としました。これにより、安定的な性能を確保しながら、生産コストを大幅に低減した新しいバルブキャップの実用化を実現しました。

▲ 29スクリューヒンジバルブの断面図(①1材目射出、②2材目射出)

吐出性と液切れ性の両立を実現

バルブキャップは、バルブの肉厚が薄いと吐出時のバルブ変形が容易になるため、吐出力は小さく済み、吐出性が良くなります。一方でバルブの肉厚が厚い場合は、素早く液を遮断できるため、吐出後の液切れが良くります。この相反する性能を両立させるため、バルブの付け根部分を薄くし、液を切る中心部のみを厚くすることで、吐出性と液切れ性の両立を達成しました。

▲ 吐出性と液切れ性が良いため、内容物が注ぎやすく、液垂れもしません。

プロジェクトを振り返って

製品開発部 第二グループ
島田 知
今回開発した技術は、クロージャーにバルブを付加する技術として汎用性が高いため、あらゆる製品への展開が期待できるものと考えています。今後は、本技術を他の新規開発にも応用展開していきたいと考えております。
製品開発部 第二グループ
脇島 淳
入社して初めて関わった大型開発案件でした。これまでの仕事の進め方との違いに、はじめは戸惑いましたが、アイデアを出し合うことで、今までにない製品ができたのはとても嬉しく思いました。
生産推進部
林 敬太郎
製品に十字スリット加工をする生産装置の立ち上げでは、「『切る』とはなにか」を考え続けた毎日でした。最後はまさかあんな方法でうまくいくなんて・・・!
金型技術部 技術グループ
高山 裕史
社内で初めて、2色成形コアバック構造の金型設計と製作をすることができました。今回の経験をもとに、これからも製品の付加価値向上や生産性向上を目的とした、新たな金型構造に挑戦したいと考えています。

トルシア樹脂キャップ

Project vol.3 効率と安全を両立するナットアタッチメント 製品開発部 第3グループ 小林 龍太

実は日本クロージャーの技術が土木・建築業界のお客様の役に立っています。
2012年の笠子トンネル崩落事故以降、工事現場では一層安全意識が高まっており、ナットが適性トルクで締められているかの確認を行っています。ただ、その分作業効率が落ちてしまい、ヒューマンエラーによる締め忘れもありました。
そこで、適正トルクで締められると破壊され、ナットから外れるアタッチメントを開発できないかとご相談を受けました。アタッチメントが外れていれば適正トルクで締めた証明になり、締め忘れも防止することができるというコンセプトで開発がスタートしました。

▲ 適正トルクで破壊されるか検査を行う様子

トルク管理と締め忘れ防止を1つのキャップで

全く未知の業界であり開発も手探りでした。まず屋外で使用される製品でありキャップの材料では根本的に耐久性、強度が足りません。10種類以上の材料をテストし、最適なものを探し、製品形状も数十個以上テストしました。
そうして少しずつノウハウを蓄積していくことで、ようやく要求機能を満たした製品化が決定しました。しかし、商品化決定も束の間、不具合が発生しました。ナットをセットして1週間程経つと約1%の頻度で適性トルクを発揮せずに破損してしまったのです。原因はナットとの嵌合※が強すぎることでした。緊急で嵌合方法を抜本的に見直し、同時に不良発生頻度が90%以上になる過酷試験を構築しました。過酷試験で破損が0になるまで嵌合を最適化し、無事製品化することができました。
※嵌合:軸と軸受けのように、機械のいろいろな部分がはまり合う関係。また、その具合。

▲ 完成に至るまでの試作品の一部

プロジェクトを振り返って

製品開発部 第三グループ
小林 龍太
製品化を初めて経験でき、大きな自信になりました。高速道路を走る時には「ここで使われたかな?」と想像しつつ運転しています。
製品開発部 材料グループ
村井 将孝
屋外の厳しい環境下でも使用される製品であり、過酷条件を想定した材料選定や評価方法確立に苦労しました。3グループ全員の協力で製品化できました。
製品開発部 第三グループ
村元 勝広
開発途中から参加した形になりますが、低頻度で発生する製品割れの原因究明と再現試験に試行錯誤しながらメンバー一丸で取り組んだのが今では良い思い出です。
西部営業部 第二グループ
佐藤 友宣
土木・建築業界という今までお付き合いのないお客様でしたが、お客様・当社が一丸となって製品を立ち上げられたことがとても良い経験になりました。

38PP-M CAN RW3A P.P.CAP

Project vol.4 密封の形状から、開けやすさへアプローチ 製品開発部 CS技術グループ 細野 浩二(当時:製品開発部 第一グループ)

近年のボトル缶市場において、キャップに求められる性能として「①易開栓」「②耐衝撃性」「③液噴き(※1)防止性能」などがあります。特に高齢化社会が進む国内においては、「開けやすい」キャップが強く望まれています。従来のボトル缶用P.P.キャップは、外観を形成する天面のアルミ(アルミシェル)に、内部を保護するライナー材(1層)が接着されたタイプが主流でした。しかし、この従来の接着タイプでは、ライナー材とボトル口の嵌合力の加減により、開栓に必要な力が左右されてしまいます。開けやすさを求めて嵌合力を低減させると密封性も低下してしまうという、開けやすさと密封性はトレードオフの関係にありました。
※1 液噴き…キャップ内部に溜まった液が、開栓時に外へ噴き出すこと

▲ 38PP-M CAN RW3A P.P.CAP

2層構造で開けやすさと密封性を両立

当社独自のライナーモールド技術(※2)により、開けやすさと密封性を両立できるライナー構造(2層)を構築しました。アルミシェルと一層目のライナーを非接着とすることで、開栓に必要な力を弱めました。さらに二層目のライナーに柔らかく、かつ耐熱性の高い素材を使用することで、高い密封性を保ちながら、開けやすいキャップの開発にいたりました。なお、二層目のライナーの形状を工夫し、キャップ内の液溜まり量を少なくすることで、開栓時の液噴き量の低減にも成功しました。
※2ライナーモールド技術…明確に定義されたプロファイルに従ってライナーを成形する技術

▲ 嵌合断面図

プロジェクトを振り返って

製品開発部 CS技術グループ
(当時:製品開発部 第一グループ)
細野 浩二
キャップ内部のライナーを2層構造にするというのは初めての試みでしたので、多くの課題がありました。トライ&エラーの繰り返しでしたが、他グループからもアドバイスをいただき、製品化にいたりました。本開発に携わっていただいた多くの方々に感謝いたします。
製品開発部 第一グループ
吉田 舜弥
入社して、初めて製品化に携わることができ、とても良い経験になりました。
今回の経験を活かし、今後も設計業務に励んでいきたいと思います。
製品開発部 第一グループ
近藤 英典
ライナーモールド成形で初めて扱う樹脂材で、最初は成形することが困難でしたが、
生産工場へ通い続け、現場の方々とともに生産性を確立することができました。

26&30フックスパウトセットカートン

Project vol.5 プルリング無しでワンタッチ開栓 製品開発部 第二グループ 大森 慎二

近年、紙パックに口栓の付いた容器包材が増加しています。これらの容器が使われるようになった当時、紙パックの口栓はプルリングを開封して使用するものが主流でした。そんな中、利便性の向上と環境負荷の低減を目指し、プルリングを付けずに密封性と開栓のしやすさを維持した口栓の開発を開始しました。お客様からの要望をもとに、ブリッジ(開栓時に切り離されるバンドとキャップ本体を繋げる部分)の破断感の付与と、破断時に鳴る音にこだわり、初めて開栓したことがはっきり識別できるようなタンパーエビデンス性を強調しました。標準口径26mmのキャップの上市後に実施した、中口径30mmのキャップ開発では、口栓が紙パック本体から突出しないように口栓自体の高さを低くする必要がありました。そこで、狭いキャップの握り幅でも開けやすくするために、キャップ側面の溝の形状を工夫し、グリップ性を強化しました。

▲ シール部拡大断面図

独自シール形状で開けやすさと密封性を両立

頂点が屋根型に加工された紙パック(ゲーブルトップ)の口栓は、キャップが屋根の部分に装着されるため、PET飲料のようにキャップ全体を握って開栓することはできません。指先でキャップをつまんでも開けられる、開栓のしやすさが求められました。プルリングを付けずに密封性を確保するため、PET飲料用に当社で多く使用しているインナーリングシール方式を採用しました。しかし、従来のキャップのような密封構造を導入すると、開栓に必要な力が大きくなってしまいます。そこで、キャップを閉めた時にスパウトと接するキャップコンタクトリング部が、スパウトのノズルの天面を押してたわませる独自の密封構造を採用したことにより、開けやすさと密封性を両立することができました。

▲ セット品断面図

プロジェクトを振り返って

製品開発部 第二グループ
大森 慎二
今回の開発によって、チルド用の紙パック口栓において基盤となる技術を構築できたと感じています。今後はより付加価値の高い製品の開発に取り組んでいきます。
東部営業一部 第二グループ
山本 剛
お客様並びに社内関係部署の皆様に多大なるご協力をいただきました。「絶対に諦めない」覚悟と責任をもって、さらなる拡売を目指します。
生産推進部
林 敬太郎
工業的ばらつきを限界まで許容するために、最新でユニークな電気制御をプログラムの容量限界ピッチピチまで詰め込みました。無駄バネのない安定的な生産装置は永遠のテーマです。
品質保証部(当時:製品開発部 第二グループ)
苫米地 諒
開発部門在籍時に初めて上市に携わった製品でした。紙パックを想定した漏洩試験の考案には苦労しましたが、試行錯誤の繰り返しは良い経験になりました。